さて、猫角家の不正の原点、 自動車保険詐欺に立ち返ってみよう。

実は、自動車保険の保険金詐欺は、生命保険に比べて金額は小さいが、発生頻度は非常に高い。自動車を盗まれたと偽って、車両保険を受け取る。自動車事故で怪我を負ったことにして、治療費と休業補償を受けとる。事故により車体が損傷したとして、修理代を受け取る。こういった自動車保険詐欺の損害は、年間で数千億円に達しているという。

最近の「流行り」に注目してみよう。たちの悪い修理業者は、自らレンタカー業を兼営しておき、修理中の代車として、自社のレンタカーを客に貸し出す。もっとも、客の自動車保険にレンタカー費用を補償する特約が付いている場合だけに限るが。かくして、修理業者は、保険会社からレンタカー代金を受け取ることができるが、ここで小金を稼ぐわけだ。数日で修理ができるようなケースでも、旧式のベンツだから部品の取り寄せに時間が掛かるといった言い訳を使って、客にレンタカーを貸し続ける。客は、保険会社の負担で、代車の高級外車に乗れるのだから文句はない。

もっとたちの悪い例では、修理は3日で終わって納車しているのに、30日間、レンタカーを貸出したことにして、客と口裏を合わせておく。損保から入ったレンタカー代から、客にキャッシュバックする。客は、これだけで、何もしないでも、たっぷりと返戻金を受け取れるのだ。例えば、2007年モデルのベンツ、S350を一か月借りると、レンタカー代金は140万円近くになる。ここから、客にいくらキャッシュバックするのか?

客が4台の自動車を所有しているとする。常に1台が、事故や故障による修理に回されていて、その間、代車のレンタカーが修理工場から提供されていることにする。これで修理工場から、キャッシュバックが貰える。金額は小さいが、1年を通じて、現金が入ってくる仕組みだ。

この種の修理工場と客の結託による自動車保険詐欺は、日本全国で数百社で実施されているのだ。札付き工場は、レンタカー費用を支払限度日数ぴったりで請求してくるなど、どう見ても不自然な請求を乱発してくる。損保会社も、当然ながら、疑いの目で見ていて、ブラックリストができつつある。従って、捕まらないまでも、新たに保険を引き受ける損保がなくなってしまうのだ。

猫角姉妹の車の保険の引き受け手がなくなったのは、実は、この手口を多用しすぎたからなのだ。経営不振で、この種の詐欺商売に手を出した名古屋のホースエージ自動車工場には、実は、随分と事故車を持ち込んだ経緯があったのだ。

この種の詐欺ビジネスだが、逮捕されると意外に刑罰が重い。10年以下の懲役が課せられる。この小説のこの部分を読んで、急に呼吸が荒くなり血圧が上昇している紳士がいそうだが、命に別状がないことを願う。(続く)

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